オールド横浜、関内の隠れ家的ダイニング・レストランとして20年近く愛されたGREEN BOWLが、今年1月に「メシとテッパン ATOCHI」としてリニューアル・オープンしたのをご存じでしょうか?
ワインとの相性のよいフレンチ、イタリアンをベースに、ヘルシーな野菜、和牛のステーキ、そして、お好み焼きを中心とした粉もんの「魂」をもつ良いところどりの欲張りなレストランです。

料理長・金森余翰(ヨハン)さんは、横浜生まれ、ニュージーランドなど南太平洋育ちの29歳。14歳の頃には「料理人になる」と意識して食べたり、学んだり。オーストラリアの料理学校でフレンチを専攻し、17歳で初めて自分の包丁(牛刀)を手にしましたが、その使い込んだ宝ものをいつも身近に持っていました。お守りなのかもしれません。

地元横浜でフレンチの老舗レストラン馬車道十番館で5年間働いて、昨年、料理長候補として元GREEN BOWLオーナーに見出されました。この6月から料理長として新たな「テッパン文化」への歩みをスタートしています。
ーー29歳にして料理長。どんな気分ですか?
「鉄板焼きをやりたくてコロナ禍でしたが思いきって転職活動しました。
フレンチで5年では、鉄板焼きの店でのキャリアとしては足りず、3年間はお客さんの前に立てないといわれ、難しい転職でした。でも僕はお客さんの前に立ちたい!
そして、鉄板焼きでオープニング・スタッフを探していたGREEN BOWLのオーナーに出会いました。

責任者になってみて、料理は自分の好き勝手にやらせてもらっていますが、厨房のやり方、お客さんに料理を出す流れなど、考えることはたくさんあります。なるべく妥協せず、仕込みもある程度簡単にできるよう準備を考えていくのは難しくもあり、楽しくもあります」
お店の看板メニューは、テッパン上の網で焼く横浜ビーフ(和牛)の柔らかいステーキ。肉の量はお客さんの胃袋の具合で決められます。
そして、お客さんの好みや冷蔵庫の食材によって変わる「気まぐれヨハンのテッパン焼き飯」はぜひ味わいたい一品。野菜は、定番野菜に加え、季節にごとに数品が加わります。初冬の今なら、滑らかな見た目も美しい「黒あわび茸」、稲科の「マコモダケ」のどちらも山椒オイルかけで。
「里芋」の照り焼きはテッパンとの相性が良く楽しめます。

お好み焼きは、鶴橋のおばあちゃんの味
このお店で最も味わいたいのは「お好み焼き」、お店の心臓といえるでしょう。
こだわりのエピソードは料理長の子どもの頃の記憶へと遡る。それは、お好み焼きの名店が立ち並ぶ大阪「鶴橋(つるはし)」での、“屋台のおばあちゃん”から得た原体験(微妙な調理法が成功したときの味わい)が、料理長の「粉もんへの思い」に今も染み込んでいます。
「大阪のお好み焼きは、薄い生地にたくさんのキャベツ、軽い食感です。普通は生地をカップで混ぜたあと鉄板に落として整形しながら焼きますが、僕はカップではあまり混ぜないで鉄板の上で熱い状態で混ぜます。熱い状態で生地に火が入るので、手早く、油を少なめにして良い塩梅で整形できると、生地の水分をちょうどよく仕上げることができます。鶴橋の屋台のおばあちゃんが作る、ふっくらとしていて、軽くて、すぐ食べられちゃうようなお好み焼きができるんです」
ある深夜、大阪出身のそれも鶴橋に出入りするようなお客さんが、出張でたまたま横浜に来ていて、お好み焼きを食べてくれ「すごく美味しい」と言われました。そしてほぼ毎月、出張のたびに訪れてくれるようになりました。
大阪に住んだことのない料理長ですが、想いが伝わった嬉しい経験を語ってくれました。

また、大阪、広島のお好み焼きといっても、生地、キャベツの量、麺、全く違うものです。ちなみに、横浜の人は甘いドロっとしたソースを、大阪の人はさらりとしょっぱいソースを好むと料理長はみています。
横浜でお好み焼きを提供するとき、お客さんのイメージを受け止めるセンスが必要で、ここでは、それがテッパンをはさんだ会話から生まれるのです。
料理を作るとき、気持ちから作っている。まっすぐな料理人生!
独身で一人暮らしの金森料理長。ニュージーランドでの子供時代はローラーブレード、学生や社会人3年目までは卓球などスポーツに親しんできたアクティブな一面もみられます。
ただお店を切り盛りするようになった最近は昼夜逆転でもあり、スポーツはやっていないそうです。
夕方6時のオープンに向けて午後3時から店に入って仕込み。
お店が終わるのは明け方。その間は料理とお客さんとの時間です。
オープンからはお食事メインのお客さん。23時を過ぎると、食後の二次会、三次会でお酒をメインに楽しむお客さん。近隣の飲食店からも仕事終わりで訪れるようなお客さんは料理長のお得意さまです。
店の名の通り、メシとテッパンに邁進する料理長、「僕は料理を作るとき、自分の気持から作っている。そんな毎日が何より楽しい」と語る。

ーー休日の過ごし方は?何を食べますか?
「誰とも話さず一人でいることが好きです。食事をするときは、休日も自分の料理と同じジャンルの料理を食べますね」自分で作るものを好んで食べているかどうかは、料理人の信用につながると料理長は考えています。
ーーお薦めのお店や食べ物は?
「これからクリスマスですが、古巣の馬車道十番館のシュトーレンは美味しいですよ!」
ワーカーホリックといえばそう見えるかもしれません。しかし、いたって自然体で、料理を中心とした日常生活です。音楽の趣味を聞くと、お兄さんの影響でパンクロックが好き。取材のときもお店でもかけていました。好きなものは好き、そこに、オンもオフもないのでしょう。
別の言い方をするなら、料理長ご本人も意識しないなかで、ただまっすぐな料理人の道を歩み始めているのかもしれません。料理長の挑戦は始まったばかりです、ぜひ皆さんで見守り、メシとテッパンATOCHIをともに楽しみませんか。




まもなく初の年越し。
ATOCHI メシとテッパンでは来年からの企画として”鉄板前のカウンター席限定”の「コース料理」を準備しています。
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メシとテッパン ATOCHI
横浜市中区太田町1-20 三和ビル 1F
最寄り駅:JR関内駅、みなとみらい線日本大通り駅より徒歩4分、馬車道駅より5徒歩分
席数41席、分煙(カウンター席は禁煙)、ソファー席、ロフト席、半地下席
日曜定休(月曜が祝日の場合は日曜休業)
ご予約:050-5868-5653
営業時間;
月~土18:00~翌4:00
(お食事L.O.3:00、ドリンクL.O.3:30)
祝日 17:00~23:30
(お食事L.O.22:30、ドリンクL.O.23:00)
お支払方法:現金またはクレジットカードが使えます